なぜ日本のITは後れを取るようになったのか。その理由の1つとして、日本人の根強いハードウェア信仰が挙げられるでしょう。つまりソフトウェアを軽視する風潮があるということです。(1/4)
DXに必要な「ソフトウェア軽視」からの脱却
このような視点で改めて日本社会を見てみると、やはりハードウェアを「主」、ソフトウェアを「従」とする価値観が根強いといえるでしょう。ソフトウェアを入れ替えるだけでいいような機能にもわざわざ専用端末を作ったりするのはいい例です。また、日本人がもてはやす「ものづくり」という概念においても、システムやソフトウェアはなかなか入ってきません。大学の理系学部も、工学、理学系の学部に対して情報・通信系の学部はいまだに一段低くみられがちなのではないでしょうか。
日本は昭和から平成の中期まで、「ものづくり」の力に支えられて経済成長を果たしてきました。そうした大きな成功体験が、1990年代後半以降の産業のデジタル化、IT化の足かせになっていることは否定できません。
かくいう筆者も「パソコン」というとシステムよりマシンスペックを追いかけてしまう方です。しかし時代の趨勢は、間違いなくソフトウェア側へ比重が傾いており、このままでは中国との差が(もちろん米国との差も)開く一方です。昨今、あらゆる業界で「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が叫ばれていますが、まずはソフトウェアに対する軽視をはっきり認識することこそがスタート地点になるのではないでしょうか。